組織人のコーディネーション、ノマドのコーディネーション
前回のエントリー「真のノマドとして生き続けるための『3つの方向性』と『1つの鍵』」(http://messageleaf.hatenablog.com/entry/2012/09/04/164955)、佐々木俊尚さん(@sasakitoshinao)にTweetされたことで、3000人以上の方に読んで頂き、TwitterやMessageLeafで色んなフィードバックを頂きました。
その中で特に目立っていたのが、「これは、ノマドだけでなく、どんな世界/生き方でも必要なこと」というものです。確かに大組織の中で生きていく“組織人”でも「プロフェッショナルと言える専門分野を持つ」「複数の種類の仕事がわかる/できる」「周囲をコーディネートできる」というのは、成功要件として挙げられると思います。
ただし、組織人にはこれらの成功要件よりもっと重たい、必須の要件があります。
<組織人に必須の2つの要件>
ノマドには必要ないけど、組織人で成功しようとする人に必須の要件が2つあります。
まず1つめは、「自分の配下の人材の力を最大限引っ張り出すこと」です。
「この人のためならどこまでも付いていきます」というような部下で揃えられたら、組織として大きなパワーを発揮できます。そういった意味で、組織人のリーダーとしての一つの理想像は山本五十六みたいな人でしょう。「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」というのはこの人の名言として知られていますが、それくらいの。もっともこんな丁寧なタイプのリーダーは希少で、普通は「アメとムチ」で部下をがっちり掌握するものです。いずれにせよ、ピラミッド型の組織を率いるリーダーとしては、自身の持つ人事や予算といった権力を上手に使いながら部下を制御し、その力を最大限引っ張り出すことが求められます。
もう1つは、「上役を始めとした権力者を動かせること」です。
僕が最初に働いた住友電工という会社で、「上司の気持ちもわからずに客の気持ちがわかるか!」と若い部下を叱っていた課長さんがいましたが、蓋し名言です。上司に限らず、権力を持っている人の力をうまく利用する(別の言い方をすれば、“ころがす”)ことができると、仕事がとにかくスムーズになります。
またそのためには、「XXさんはYYさんの言うことだったら絶対にきく。」「AAさんの前でBBさんの話はしちゃだめだよ」みたいな、その組織の中でしか通用しない文脈(政治力学)の深い理解と注意深い実践が、間違いなく重要になります。
時々、「そんな社内政治なんて内資系の話であって、実力重視の外資は関係ないですよね」という人がいますが、これ全くの勘違いです。外資の方が上下関係が厳しい(上が下の首を簡単に切れる)分、社内政治はむしろ熾烈です。このあたりの話は、前回もTweetを紹介した松井博さん(@matsuhiroさん)の「僕がアップルで学んだこと」など読むと、実感できるでしょう。
いずれにせよ、まずは部下と上司、そしてさらには他部署や外注の力を上手に引っ張り出して利用できることが、組織人としての成功の「絶対条件」。「島耕作」はその極端な典型例ですね。
<ノマド的コーディネーションの4条件>
上で挙げたような「政治的コーディネート能力」が組織人の成功の必須要件なのに対して、ノマドに必要なコーディネート能力はちょっと違って、「リスペクトに根差したゆるい対等性」に特徴があります。
仕事を遂行していく上で協力し合っていくという点は同じでも、その文脈が権力とか権威に基づかないからです。上司として部下を動かすのでもなく、発注元として外注先を動かすのでもなく、「それぞれ独立した個が自分の得意なことを寄せ合ってやっていく枠組みを作る」、というのがノマド的コーディネーションです。
・「賛同できるミッション」
・「面白そうと思えるチャレンジ」
・「リスペクトできる仲間」
・「納得できるリターン(通常は金銭的条件)」
がそこになければ、このコーディネーションは成り立ちません。みんな、嫌なら断る・抜けることが自由にできる立場なので。この4条件をそろえられる力こそが、ノマド的コーディネート能力と言えるでしょう。どこかの業界のように、仕事の丸投げ先を見つけて上前をはねるスキームを作るみたいなコーディネーションとはえらい違いです。
ノマド的コーディネーションをする人が組織の中に入って活動をすると、大らかな組織であれば、「まあ面白いやつだから協力してやれ」って見てもらえるけれど、堅い組織なら、「何を業務と関係ないことやっているんだ。本業をまずやれ」とか「うちの部下を変なことに引きずり込まないでくれ」とかいう感じで苦い顔をする“大人”が周囲に出てくることが容易に想像されます。
最後になりますが、大組織に属さずノマドとして仕事をしている人たちも、自分の仕事のお客さんが大組織であるケースは、組織人の成功要件や行動様式は分っておいた方が良いです。「上司の気持ちはわかる必要もないが、客の気持ちはわからねば」です。
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