「MessageLeaf (メッセージリーフ)」の立上げ日誌~ウェブサイトにあなたと私の関係を~

「MessageLeaf (メッセージリーフ)」の開発から事業立ち上げに至る日々を綴ります。 Twitterアカウント:@acesuzuki

4つの新機能の追加

先週のローンチに引き続き、新機能を本日リリースしました。主な変更点は以下の4つです。 

変更点①:「サイトオーナーの管理画面デザインを更新」

変更点②:「サイトオーナーのアカウント名と写真を自由に設定可能に」

変更点③:「メッセージの内容をメール上で全文確認可能に」

変更点④:「iPhoneを使ってのメッセージの閲覧・返信が可能に」

 

変更点①:「サイトオーナーの管理画面デザインを更新」

サイトオーナーがメッセージを管理する画面を↓のような形にデザイン変更しました。今まではこの管理画面、あまり目立たない存在だったのですけど、後述にもありますように今回の変更でオーナーさんにとって主要なツールになってきます。

 

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変更点②:「サイトオーナーのアカウント名と写真を自由に設定可能に」

ローンチ時の積み残し分です。α版ではサイトオーナー側も読者にFacebookアカウント名と顔写真がオープンになっていました。しかしながら、ちきりんさんが典型ですが、匿名で書かれているブロガーも大勢いらっしゃいます。そうした方にとっては、読者に対してFacebookアカウント名や写真を出すというのはあり得ない話なので、今回そのニーズに対応しました。

上記管理画面の題名下にある青字の「設定」をクリックすると、↓の画面になります。ここでユーザー名と画像を自由に設定して頂けるようになりました。

 

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変更点③:「メッセージの内容をメール上で全文確認可能に」

MessageLeafでメッセージが入った場合、今まではメールで通知されてメッセージの一部のみが表示され、全文を確認するにはリンク先(メッセージが入った該当サイトのページ)へ飛ぶ形になっていましたが、今回の改定でメールで全文が確認できるようになりました。

 

変更点④:「iPhoneを使ってのメッセージの閲覧・返信が可能に」

さらにメール内のリンク先を、該当サイトのページから管理画面に変更しました。ここで、過去のメッセージのやり取りを確認したり返信をしたりすることができます。

そして、オーナーさんにとってのGoodNewsは、今回、管理画面をiPhoneビュー対応したことによって、この一連の作業をiPhone上で完結できるようになりました。iPhone上でリンク先をクリックすると↓のような画面になります。

 

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なお、今までのように自サイトの右下Box内でのやりとりがしっくりくる方は、該当ページのリンクもメールに入っていますので、そちらでも管理は可能です。ただし、こちらはiPhoneでは表示されませんので、PCのみということになります。

 

今回のリリースで、個人ユーザーさんレベルの使い勝手は相当良くなるのではないかと感じています。使って頂いてみて、是非またフィードバック頂けましたら幸いです。

MessageLeaf(メッセージリーフ)、本日正式公開!

MessageLeaf」を本日正式公開しました!

 7月のα版ローンチ以後、招待制で80程度のサイトで設置、運用して頂いていましたが、このたびいよいよ正式版をローンチしました。

 

いくつか今までと違う点を並べますと。。。

 

・フロントページ(http://ja.messageleaf.jp/をリニューアルして、デザインを一新

↓のような感じで、綺麗に仕上がりました。

 

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・サイトに設置を希望する方はフロントページから自由に設置が可能に

今までは招待制で、逐一連絡をして頂いてやりとりしながら設置する形でしたが、今後はどなたでもご自由に設置して頂けるようになります。

上の絵の「サイトに設置する」ボタンが入口です。

 

・サイトオーナーのアカウント名と写真を自由に設定可能に

これが今回最も意味が大きい変更かもしれません。α版ではサイトオーナー側も読者にFacebookアカウント名と顔写真がオープンになっていました。しかしながら、ちきりんさんが典型ですが、匿名で書かれているブロガーも大勢いらっしゃいます。そうした方にとっては、読者に対してFacebookアカウント名や写真を出すというのはあり得ない話なので、今回そのニーズに対応しました。

読者側は作者にFacebookアカウント名と写真をオープンにしなければならないのに、不公平ではないかと考えられる方もいるかもしれません。私たちは、コンテンツを作っている作者側はそこに労力とリスクをかけているのだから、それで良いと考えました。ただし、あるサイトで作者の立場の人も、別のサイトでは読者なわけですから、読者としてメッセージを送る場合はしっかりFacebookアカウント名と写真をオープンにして頂きます。なので、どんな方でもMessageLeafを使って頂く際にはFacebookアカウントでのサインインをして頂くというわけです。

(本機能は問題が生じたため、実装できておりません。1週間ほど目途にお待ちいただきたくお願いいたします<10/11追記>) 

 

まだまだ改良を重ね続けていきますが、そのためにも皆様からのフィードバックが何よりです。ちょっとしたことでも構いませんので、お気づきの点あれば、是非、MessageLeafを使ってフィードバックお願いいたします!!

ベンチャーこそ“会議”が必要だ~“良い会議”の4つの効用と7つのルール~<②>

前回エントリーは、メンバーが顔を合わせての会議はベンチャーだからこそやった方が良い、というお話でした。今回は、「やり方」の話です。いわゆる「会議のハウツー本」は色んなところで見かけますが、大体その手の話は大きな組織での会議が想定されています。ここでは、小さなベンチャーを想定して話を進めます。

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<良い会議をするための7つのルール>

・ルール1:プロダクト・オーナーが“議題設定”する

会議を生産的にするには、何はともあれその会議で何を決めるかの議題(イシュー)が事前に参加者の間で共有されている必要があります。会議が始まってからメンバーから「で、今日は何を決めるんだっけ」みたいなマヌケな発言を出すような暇はベンチャーにはありません。そして、議題を設定するのは、事業全体の舵取り役たるプロダクト・オーナーの仕事です。

 

・ルール2:全員で時間配分を意識する

よく「ファシリテーター」を置くと会議がスムーズになるというようなことが言われますが、ベンチャーではそこまで人的な余裕はありません。ファシリテーター役は置いても良いですが、結局その人にも積極的に議論に参加してもらわないといけない場面が結構出てきます。従って、ファシリテーションの意識は会議参加者全員が持つべきで、「今日、XXXも話さなければいけないとしたら、この話いつまでもできませんよね」といったコメントがメンバーの誰からでも出てくるようにしたいものです。

 

・ルール3:ホワイトボードをつかう

ウェブデザインの初期段階では、必要なアウトプットのイメージを書き出して仕様書代わりに使う、ということをよくやります。こればっかりは、ホワイトボードに勝る手段はなかなかありません。誰かがアイディアを「ポンチ絵」にして、みんなでワイワイガヤガヤやりながら、そこに付け加えたり消して書きかえたり強調したり、ってのにはやっぱりホワイトボードなんですよね。

 

・ルール4:遠慮しない

ベンチャーの会議は、少人数の真剣勝負ですから遠慮は無用だし害悪です。特に、「ここは相手の得意領域なので」と疑問に思ったことを口にしないというのは最悪です。前回のエントリーにも書きましたが、「素人の質問」が相手の頭を活性化するので。

 

・ルール5:結論はすべて行動計画に落とす

「次の会議までに、各々が何をしなければならないのかを明確に把握する」、というのが会議の最大の目的なので、どんな議題の結論も最終的には行動計画に落とし込まれていなければいけません。

ある議題で議論してその時決められないという場合は、そのまま放っておくのではなく、いつぐらいのタイミングでこの議題を再度議論するか決めておくことが、行動計画になります。

 

・ルール6:必要最低限の議事録(=決定事項)を残す

何をどう決めたかは、結構忘れてしまいがちなものです。従って、次の会議の議題を考える上でも、やっぱり議事録は残すべきです。ただ、大きな組織みたいに大層な議事録を残す必要はありません。決定事項が書かれてさえいれば、ホワイトボードの写真だけでOKです。

 

・ルール7:たまに第三者を入れる

時々環境を変えると、人のアタマは活性化されるものです。よくあるのが、会議の場所を変えるというやり方です。それとはまた別の活性化の方法もあって、それは「よそ者(第三者)」を会議に入れるというものです。

小さなベンチャーの会議はせいぜい4-5人程度でしょうから、1人「よそ者」が入ることで、袋小路に入っていた議論に全然違う視点が加えられて、突破口が開けること、結構あります。

 

僕がもう一つの顔を持っている医薬品の世界では、「相加作用」と「相乗作用」という概念があります。2つの成分の薬を同時に投与すると、足し算(相加作用)ではなく掛け算的(相乗作用)な効果が生まれる事があるというものです。

人材資源の限られているベンチャーだからこそ、実のある会議で相乗作用を起こしていかなければ、です。

 

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ベンチャーこそ“会議”が必要だ~“良い会議”の4つの効用と7つのルール~<①>

<ベンチャーに会議は不要、なのか>

今週読んだブログ記事で一番おもしろかったのが、イノーバ・ブログの宗像さんの火曜日のエントリー「ベンチャー企業の生産性を2倍にする方法」

http://innova-jp.com/blog/entreprenuer/%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC/#more-5138)です。

記事にあるように、何でもかんでも全員で話し合って決める、ではベンチャーの生産性が著しく低くなるというのは頷けます。

 

一方で、ベンチャーだと必要な話は立ち話程度で済んでしまうので、関係者が集まっての会議らしい会議をしないケースもあると思います。「会議」なんて大企業文化ですからね。それに、人手が少ないのでそれぞれの専門分野に専念している方が効率が上がる、というのも、論理的に聞こえます。

でも僕は実は、「ベンチャーだからこそ会議が必要」と思っています。個々のメンバーがそれぞれしっかりした専門性(プロフェッショナリティ)を持っている「強い個」であればあるほどそうだと思います。

 

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<会議の4つの効用>

ソニックガーデンの対談ブログ「MessageLeafの出来るまで【その3】〜自分の思いがちゃんとこもったものが作れる〜」(http://www.sonicgarden.jp/116にも出ていますが、僕自身は、MessageLeafというITベンチャーをやる中で、毎週必ずチームメンバーと顔を合わせて会議をしています。

記事には、顔を合わせて話すと話が早いという利点について書かれていますが、実はそれよりもさらに重要な4つの効用があります。

 

効用1:他人のアタマを使って自分のアタマを進化できる

会議をすると、自ずと自分の意見を他の人に説明することが必要になります。まず他の人に説明すること自体で、自分の頭の中が整理されていきます。さらにメンバーから突っ込みが入る(=質問をされる)ことで刺激を受け、思考が進化&深化する。これが会議の一番の効用だと思っています。

MessageLeafの本質は「良いコンテンツに対して、『いいね!』以上の気持ちを伝える仕組みづくり」であることに気付いたのも、会議の中で、「MessageLeafが本当にやりたいことってなんでしたっけ?」という倉貫さんからボソっと出てきた質問がきっかけでした。

自分のプロフェッショナルな領域にプライドを持つことは悪いことではないですが、それが「領域外の人から口出しされたくない」になってしまうのはよろしくない。自分が何をやっているのか、どうしてそれが大事なのか、自分のアタマで考え抜く良いきっかけを、他人のアタマがつくってくれるのが会議の良いところなのです。

 

効用2:ムダな仕事をしなくなる

お互いの意思疎通がきっちりできていないまま、それぞれの専門分野に任せて仕事を進めていくと、たいがい無駄が生じます。たとえば。。。

 

Aプログラマ):「試作品、できたよ。」

B(プロダクト・オーナー):「あれ、なんで右下からポップアップじゃないの」

A:「え、どういうこと?真下だっていいじゃない。」

B:「いや、右下からポップアップしてくるっていうのがこのツールのミソなんだから」

A:「それなら早く言ってよ~」

B:「えー、その話、してたよ。」

 

なんていうケース。

真相は、「Bさんが立ち話で伝えていたけど、Aさんはあまり重要な話と思っておらず聞き流してしまっていた」、かもしれませんし、「Bさんが伝えていたけどAさんが憶えていなかっただけ」かもしれませんし、「Bさんの単なる記憶違いで伝え漏れていた」のかもしれません。いずれにせよ、立ち話ベースだとこういったコミュニケーション・ミスは結構起きますし、テキストベースでのコミュニケーションでも数多の他の情報と一緒になると埋没するリスクが結構あります。

そう考えると、結局は会議をした方が無駄な仕事はしなくなるんです。というより、無駄な仕事をしないようにするために会議をする、と言った方が良いかもしれません。

 

効用3:仕事の納得感が生まれる

こういうケースを考えてみて下さい。

プログラマが、ただ単に、「そっち(A)の仕事ではなくてこっち(B)を先にして」とプロダクト・オーナーに言われたとします。でも、どうして「そっち(A)じゃなくてこっち(B)」なのか、なかなか納得できません。開発としてはABの順番で行く方が効率良い、と考えているからです。

でも、例えばプログラマも参加する会議の中で、「実は試作品ユーザーの声を聴いてみるとBの機能開発の優先度が圧倒的に高い。プロコン考えてもBAの順番にせざるをえない。でも、開発にそれだけ負荷がかかるのなら同時進行で進んでいるCの開発は一部後ろ倒しにしよう。」なんていう議論があってBAとなったのだとしたら、プログラマも心から納得してBに取り組めます。そうした「仕事の納得感」というものはモチベーションや生産性にも大きく響いてくるはずです。

プログラマが単なる「歯車」で働いているんだったら話は別ですけどね。ただ、そういうベンチャーだと、プログラマの人も長続きしないのではないでしょうか。

 

効用4:リスク回避になる

効用1の応用編なのですが、自分と異なる視点が入ることによって、大きなリスクを回避することにも繋がります。

大体、顔を合わせて会議していると、何か意思決定した時に顔を見渡してみて、未だ腑に落ちていない表情をする人が出る時があります。そういう時に「何か引っ掛かっているの?」と考えを引き出してみると、自分がそれまで気付いていなかった落とし穴や視点が出てくることがある。

先日も、来月予定しているローンチ記念MeetUpについて、「いや、フタ開けてみたら5人しか来ませんでした、なぁんてことになったらどうしようかと思って」というフジワラさんの一言にギクッとさせられました。この何気ない一言が、そうならないように本当にベストを尽くすには何が必要か、万が一そうなってしまった時は何をするのか、を考える良いきっかけになったのです。

お互いに干渉せずに気持ち良く仕事ができている、というのは実は危ない兆候だと思っています。「う、嫌なこと言うな~(痛いとこ突いてくるな~)」という思いを時々しているような状況の方が健全で、会議というのはそういう場を提供するんですね。

大体、ベンチャーやろうなんて人は、僕も含めて「独りよがり」になりがちなタイプが多いので(笑)、よくよく注意した方が良いと思います。

 

 

ということで、今回は、メンバーが顔を合わせての会議はベンチャーだからこそやった方が良い、というお話でした。とはいえ、「やり方」を間違えると、かえって仕事の効率を悪くしてしまうのも会議の特徴。大きな組織ではよくある話です。

次回、良い会議をするために何が必要か、を考えていきます。

 

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南米の辺境コーディネーターの「セルフ・ピボット」3つの仮説

<セルフ・ピボットと抽象化スキル>

先々週のエントリー「真のノマドとして生き続けるための『3つの方向性』と『1つの鍵』」(http://messageleaf.hatenablog.com/entry/2012/09/04/164955で書いた「セルフ・ピボット」について、非常に似た方向性の論考が、酒井譲さん(@joesakai)のブログエントリー「抽象化スキルが、生死を分ける時代に」(http://nedwlt.exblog.jp/18463890/)に出ていたのでご紹介します。

 

次々とイノベーションが起こり、競争が激化する社会においては、特定の仕事における職務経験の価値は、時間とともにどんどん減っていきます。

今は安泰に思える仕事であっても、それは突然、地球の裏側にいる人によって奪われたりするわけです。そうした社会では、誰もが、次々と新しい仕事にチャレンジしていかなければならないでしょう。

でも、仕事を得るために求められるのは、いつだって、その仕事において何らかの業績を残してきたという職務経験です。ネット社会では「やったことのない仕事の職務経験」が求められてしまうとするなら・・・。

 

私の言う「セルフ・ピボット」は、「軸足を置きながら自分の得意分野を拡げていく事」と定義していますが、酒井さんの言う「やったことのない仕事の職務経験」への適応、はまさに同じことを指していると感じました。そして、それができるようになるための鍵を、酒井さんは「抽象化スキル」だ、と喝破しています。

 

そんな時代でも「やったことのない仕事の職務経験」が求められるような、一見矛盾した状況に適応する人材が出てくると思います。僕は、そうした人材に共通しているのは、抽象化スキルだと考えています。

抽象化スキルとは、その対象となることがらより、特に注目すべき要素を抜き出しつつ、他は無視するというスキルです。これによって、物事の本質に迫ることができます。

・・・(中略)・・・

「抽象化スキルは、経験の再利用性を高める」というわけです。経験の素因数分解をして、一見異なる多くの仕事のなかに、最大公約数を見つけていくという態度こそ、生死を分ける重要なものになるはずです。

 

私も、「抽象化スキル」が「セルフ・ピボット」の鍵になるというこの指摘は大いに同意します。では、この抽象化スキル、一体どうやって適用するのでしょうか。酒井さんはブログの中でマクドナルドのアルバイトを事例として出されていましたが、私も事例を考えてみたいと思います。

 

<南米の辺境コーディネーターのセルフ・ピボット>

実は、先日のエントリーに対して、何と南米の辺境コーディネーターの方からMessageLeafを頂きました。日本の海外ツアーのお客さんを南米の氷河に連れて行ったり、TVクルーを6000m峰に登る手配をされたり、というようなことがお仕事だそうで、業界全体の縮小の波を受け、次の展開を模索されているというお話でした。

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ご本人に詳しく確認したわけではないので、ここから先はある程度想像が入っていますが、おそらく一番大きな顧客は日本のテレビ関係の取材クルーだったのでしょう。しかし、テレビ業界も周知の通り経営的にどんどん余裕が無くなってきていますので、番組の制作予算が削られ、例えば南米に行って取材なんて大型予算を組むことができなくなってくる。となると、どう考えても、この先そのままだと尻すぼみになってしまうのは目に見えています。

ではこの「南米の辺境コーディネーター」の方にとってのセルフ・ピボットは、どのようなものが考えられるでしょうか。

 

仮説1:顧客のグローバル化

この方の強みは何と言っても、「南米の究極の辺境での安全をギャランティーする特殊技能」にあります。だとすると、この技能に頼りたいと思うTVクルーは日本だけでなく世界中にいるでしょう。簡単ではないですが、言葉の問題を乗り越えていけば、顧客は世界中に拡がります。

 

仮説2:日本人高齢者をターゲットした「隠れ辺境スポット」ツアー開発

南米の辺境の中でもここは意外に難易度が低いけど素晴らしい辺境体験ができる、といったような「隠れ辺境スポットの知識」、というのもこの方の強みでしょう。氷河以外にもそんな場所はきっと沢山あるのでしょう。例えば、これから増える一方の日本の“高齢旅行者”相手にそうした「隠れ辺境スポット」を案内するツアーを、高齢者がよく使いそうなJTBとか近ツーといった老舗旅行会社と企画してみる、というのも面白そうです。

 

仮説3:新しい旅の在り方への参画

まあしかし、高齢者相手で難易度の低いツアーをやるのでは心躍らないかもしれません。若くて体力さえあれば行きつける「究極の辺境スポット」に旅行してみたいという若者もいるかもしれませんし、そうしたスポットの知識ももちろんこの方の強みです。

新しい若者の旅を創るという意味では、Trippiecehttp://trippiece.com/という新しいソーシャル旅行サービスと手を組んでいく手もありそうです。Trippieceでは、「行ってみたい旅を共有し、それに興味を持った人達みんなで旅をつくります。例えばアマゾン川でピンクのイルカと遊んだり、アラスカでオーロラを見たり、ラオスで象使いになったり。」というようなことをやっているので、このコミュニティの中で「こんな旅もできるけどいかがですか?」と斬新な提案をしていく、なんてことが考えられます。

 

 

貯金は使うだけなら目減りします。再投資して別の形の資産形成をしていくのであれば、それは活きたオカネになります。

経験という名の貯金を、貯金と考えずに次への投資の元手と考える割り切りができる人だけが、「セルフ・ピボット」で進化し続ける個となれるのでしょう。

 

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組織人のコーディネーション、ノマドのコーディネーション

前回のエントリー「真のノマドとして生き続けるための『3つの方向性』と『1つの鍵』」(http://messageleaf.hatenablog.com/entry/2012/09/04/164955佐々木俊尚さん(@sasakitoshinao)にTweetされたことで、3000人以上の方に読んで頂き、TwitterMessageLeafで色んなフィードバックを頂きました。

その中で特に目立っていたのが、「これは、ノマドだけでなく、どんな世界/生き方でも必要なこと」というものです。確かに大組織の中で生きていく“組織人”でも「プロフェッショナルと言える専門分野を持つ」「複数の種類の仕事がわかる/できる」「周囲をコーディネートできる」というのは、成功要件として挙げられると思います。

ただし、組織人にはこれらの成功要件よりもっと重たい、必須の要件があります。

 

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<組織人に必須の2つの要件>

ノマドには必要ないけど、組織人で成功しようとする人に必須の要件が2つあります。 

 

まず1つめは、「自分の配下の人材の力を最大限引っ張り出すこと」です。

「この人のためならどこまでも付いていきます」というような部下で揃えられたら、組織として大きなパワーを発揮できます。そういった意味で、組織人のリーダーとしての一つの理想像は山本五十六みたいな人でしょう。「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」というのはこの人の名言として知られていますが、それくらいの。もっともこんな丁寧なタイプのリーダーは希少で、普通は「アメとムチ」で部下をがっちり掌握するものです。いずれにせよ、ピラミッド型の組織を率いるリーダーとしては、自身の持つ人事や予算といった権力を上手に使いながら部下を制御し、その力を最大限引っ張り出すことが求められます 

もう1つは、「上役を始めとした権力者を動かせること」です。

僕が最初に働いた住友電工という会社で、「上司の気持ちもわからずに客の気持ちがわかるか!」と若い部下を叱っていた課長さんがいましたが、蓋し名言です。上司に限らず、権力を持っている人の力をうまく利用する(別の言い方をすれば、“ころがす”)ことができると、仕事がとにかくスムーズになります。

またそのためには、「XXさんはYYさんの言うことだったら絶対にきく。」「AAさんの前でBBさんの話はしちゃだめだよ」みたいな、その組織の中でしか通用しない文脈(政治力学)の深い理解と注意深い実践が、間違いなく重要になります。

時々、「そんな社内政治なんて内資系の話であって、実力重視の外資は関係ないですよね」という人がいますが、これ全くの勘違いです。外資の方が上下関係が厳しい(上が下の首を簡単に切れる)分、社内政治はむしろ熾烈です。このあたりの話は、前回もTweetを紹介した松井博さんmatsuhiroさん)の「僕がアップルで学んだこと」など読むと、実感できるでしょう。

 

いずれにせよ、まずは部下と上司、そしてさらには他部署や外注の力を上手に引っ張り出して利用できることが、組織人としての成功の「絶対条件」。「島耕作」はその極端な典型例ですね。

 

 

<ノマド的コーディネーションの4条件>

上で挙げたような「政治的コーディネート能力」が組織人の成功の必須要件なのに対して、ノマドに必要なコーディネート能力はちょっと違って、「リスペクトに根差したゆるい対等性」に特徴があります。

仕事を遂行していく上で協力し合っていくという点は同じでも、その文脈が権力とか権威に基づかないからです。上司として部下を動かすのでもなく、発注元として外注先を動かすのでもなく、「それぞれ独立した個が自分の得意なことを寄せ合ってやっていく枠組みを作る」、というのがノマド的コーディネーションです。

・「賛同できるミッション」

・「面白そうと思えるチャレンジ」

・「リスペクトできる仲間」

・「納得できるリターン(通常は金銭的条件)」

がそこになければ、このコーディネーションは成り立ちません。みんな、嫌なら断る・抜けることが自由にできる立場なので。この4条件をそろえられる力こそが、ノマド的コーディネート能力と言えるでしょう。どこかの業界のように、仕事の丸投げ先を見つけて上前をはねるスキームを作るみたいなコーディネーションとはえらい違いです。

ノマド的コーディネーションをする人が組織の中に入って活動をすると、大らかな組織であれば、「まあ面白いやつだから協力してやれ」って見てもらえるけれど、堅い組織なら、「何を業務と関係ないことやっているんだ。本業をまずやれ」とか「うちの部下を変なことに引きずり込まないでくれ」とかいう感じで苦い顔をする“大人”が周囲に出てくることが容易に想像されます。 

 

最後になりますが、大組織に属さずノマドとして仕事をしている人たちも、自分の仕事のお客さんが大組織であるケースは、組織人の成功要件や行動様式は分っておいた方が良いです。「上司の気持ちはわかる必要もないが、客の気持ちはわからねば」です。

 

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真のノマドとして生き続けるための「3つの方向性」と「1つの鍵」

<ノマドはフリーランスではない

これからの仕事のあり方という意味で、「ノマド」という言葉がかなり一般的になってきました。僕も2009年に独立して以後、「最近流行の“ノマド”ですね」と言われることもちょくちょくあり、最初のうちは、「ええ、そうです。まさにノマドですねぇ」なんて答えていたのですが、最近実はちょっと違和感を覚えています。

というのも、確かにオフィスが無くて色んなところで仕事しているという意味ではノマドなのですが、ノマドという言葉を「=フリーランス」ととらえている人がかなりの数いるようで、そりゃちょっと違うよと思うわけです。ノマド=フリーランスではなく、組織に属していたとしても自由に動ける/振る舞えるのであれば、それはノマドで良いと思っています。

逆にフリーランスであってもそれなりに強い「個」を保てていないと、結局は「外注」という形で「組織の歯車」に入っているだけということもあり得ます。いつ組織の側から「ぽいっ」とされてしまうかもしれないという恐れから、組織に縛られてしまうという仕事の在り方だと、真の意味でノマドとは言えないように感じます。

(このあたりの“定義”に興味ある方は、下記の記事などを参照して下さい。

「決定版:ノマドの用語の混乱に終止符を。原語から紐解く5つのノマドの定義」(http://blogos.com/article/45415/))

 

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<歯車として消費されないノマド的働き方とは>

では、「歯車として消費されないノマド的働き方」をしていくためには、どのようなことが必要になるでしょうか。精神論的には、最近、MatsuhiroさんがTwitterで出されていた「未来を切り拓くために必要な3つのこと」が参考になると思います。

 

地頭の良さとかあんまり関係ない気がする。不安に打ち克つ勇気、自分の頭で考える習慣、惰性に流されない根性。こういうものが未来を切り拓いてくれると思う。

 

しかし、これはあくまでも「精神論」。もうちょっと具体的なスキルレベルで考えてみた時、次の3つの方向性があると思います。

 

A:非常に尖った強み(専門分野)を持つ「プロフェッショナル(職人)」となること

B:複数の仕事の動きがわかる&できる「マルチ・プレーヤー」になること

C:自分の外にあるリソースをコーディネートする「コーディネーター」になること

 

最初の「職人になる」というのはわかりやすいですね。デザイナー、プログラマー、コンサルタントなど、本当に「プロ」のレベルまで行けば、働く場所もお客さんも選ぶことができます。

二番目の「マルチ・プレーヤー」というのはちょっと直感的に合わないと感じる方もいるかもしれません。大企業でも必要とされるスキルですので。でも、これ、小さなチーム(組織)である程度自由に動き合うという仕事のスタイルを採る場合、より重要な要件になります。もっと言えば、自分独りで会社をやるのであれば、かなり広範囲の業務知識・経験を備えていないとなかなか回せていけません。

三番目の「コーディネーター」というのは、外部の協力者のコーディネート能力が高いとより大きな付加価値を生み出せるし、自分が本当にやりたい仕事に集中できる(やりたくない、やるべきでない仕事から自由になれる)ということです。A,Bはどちらかというとプレーヤーになるというイメージですが、このCは経営者的な色合いが濃いですね。

 

また、いずれの方向性を行くにせよ、「セルフマネジメントができること」と「セルフブランディングができること」は必須要件になります。前者は単一の顧客だけでなく同時期に複数の顧客と仕事をすることがあり得るので、スケジューリングなどの自己リソース配分がきっちりできないと破たんする、という意味。後者は個人の信用力で仕事を取るにあたり、自分の名前や会社が検索された時に、それなりにイメージ付けができるようにしておくことが必須、という意味です。

 

ノマドとして生き続ける鍵:「セルフ・ピボット」>

最後にもう一つ大事な要素を挙げておきます。それは、「セルフ・ピボット」とでも呼ぶべきもの。自分の造語なので解説を加えますと、軸足を置きながら自分の得意分野を拡げていく事です。(「ピボット」は元々バスケットで軸足以外の足を動かしていろんな方向にステップをすることですが、リーンスタートアップの中では事業の方向転換をすることを指します。)

独立して食べていこうと思った時、初期はプロフェッショナルと言える分野があればそれなりに食べていく事は可能です。でも、そのまま同じことの繰り返しで稼いでいくと、早晩自分のプロフェッショナリティも古びたものになっていきます。過去の資産を食い潰してしまうということですね。そうならないように、強みは活かしつつも常に新たなフォーカスを見出したり、新しい分野にチャレンジしたりして、自分のプロフェッショナリティを強化する/増やす/ずらすことが大事になってきます。

僕の場合は、独立した当初は「医療用医薬品のマーケティング×コンサルティングスキル」がコアの強みでしたが、色んなプロジェクト等の経験を通じて、オンコロジー領域に特異的な強みを持ったり、Webマーケティング/ソーシャルメディアといったところに強みを加えていったりしました。特に最後の部分は医療の枠をはみ出してMessageLeafというウェブサービスを立ち上げるまでに到ったわけですが。

ともかくも、そのような「セルフ・ピボット」とも言えるようなやり方で自分ならではの進化を続けていけることが、ノマドがノマドらしく生き続けていくためのキーポイント。働く場所や組織だけでなく、自分の過去に囚われない人こそが真のノマドなのです。

 

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